金融庁から行政処分を受けると業務改善命令が出され、報告書の提出と指摘された業務箇所の是正が終わらなければ(金融庁から業務再開のゴーサインがでなければ)サービスを再開することができません。
その間、ファンドの募集ができず、次第に会社の体力が減っていきながら、倒産のリスクが大きくなっていきます。
また、借り換え等ができずに未償還の元本が危険に晒されてしまう状態が発生してしまいます。
過去から現在進行中のソーシャルレンディング事業者が受けた行政処分を比較して見えてくる共通性、そして、出資金をうまく運用できていない会社とそうでない会社、悪質な会社とそうでない優良企業との差はいったいなんなのかを調べてまとめてみました。
ソーシャルレンディングで現在まで行政処分を受けた会社は以下に示す通り4社あります。
クラウドバンクの場合
行政処分の指摘内容
- 増大する顧客と資金が既存のシステムでは追いつかず、顧客預り金残高を正確に把握できていなかった。
- 預り金の情報が不正確な状態にある中で投資家に正しくない取引残高報告書が交付されていた。
改善内容
- コンプライアンス機能の強化
- 業務管理フローの見直しと適切な人員配置
- 業務系システムのアップグレード
- 経営管理態勢の強化
- 管理系システムの変更
- 社長の辞任による新社長の起用
2度目の行政処分の指摘内容
- メザニンローンへの融資と募集しておきながら、実際にはエクイティにも貸し出しされていた。
- 「甲事業会社」の貸し出し先だったが、不動産取得SPCと表示していた。
- 手数料還元キャンペーンを告知していたが実際には支払われていなかった。
2度目の改善内容
- 度目の行政処分の改善で新経営体制(前社長の退任と新社長就任、営業担当取締役および財務経理担当取締役も交代)、業務運営態、内部管理態勢を整備し以降している。
- 行政処分勧告前に全額償還済みで、キャンペーンの支払いも済ませている。
- 広告作成責任者、広告審査責任者がファンド営業者の融資審査に同席し、誤りがないか確認する体制に改善している。
- 内部管理統括責任者が募集開始前にキャンペーンつき管理表による一元管理を行う体制としている。
その後、見事に復活を果たし、貸し倒れ、デフォルトなしで累計応募金額を着実に伸ばしていっています。
みんなのクレジットの場合
行政処分の指摘内容
- 貸付先が自社グループに集中。
- あたかも複数の会社に貸付されている表記。
- 分配金は他の償還期限が来ていないファンドの資金を当てている。
- 担保の大半が自社の未公開株式、しかも担保が設定されていないものもある。
- 償還期限が来ていないファンドの資金が償還金として当てられている。
- キャッシュバックキャンペーンにファンド出資金が当てられている。
- 白石社長がファンド出資金を自身の借金返済に流用している。
- 自社の増資にファンド出資金があてられている。
- ファンドからの借入れを返済することが困難な財務状況。
改善内容
- 社長の辞任と新社長の起用
- 子会社のソーシャルレンディングのみんなのクレジットと親会社の貸出先のブルーウォールジャパンの株式譲渡を行い子会社を解消し独立。
- 返済原資の資産の管理
- 返済原資の新規資金調達の管理
- 事務所が同じフロアだったので物理的な事務所の移転
- 募集における融資先の開示内容の大幅な拡大と正確な情報の開示
- 運用における融資先の資金使途管理
業務再開の目処は立っていない。
遅延中のファンドのその後
ラッキーバンクの場合
行政処分の指摘内容
- 貸付先のほとんどは親族が経営する不動産事業を営むウィングトラスト社。
- 田中社長を含む取締役全員がウィングトラスト社の不動産事業の会議に参加し、各事業の進捗状況等の報告を受けている。
- 内部管理責任者である取締役をウィングトラスト社の不動産事業部に兼務させていた。
- 貸付先を厳格に審査とサイトで表記しているが、実際は売上を改ざん、借入金の返済が困難な状況にも関わらずにファンド募集を継続しているので、厳格に審査とは言い難い。
- 対外的に公表できない不動産価格(担保額)をサイト上に掲載していた。
改善内容
- ウィングトラスト社との密接な関係の遮断
- 株主構成の変更
- 営業部の新設及び代表取締役の営業への不関与
- 審査部(従来の管理部)の増員
- 融資審査委員会の設置
- 社外監査役の設置
- 利益相反を防止するための仕組み
- 貸付先の分散
- 不動産担保偏重からの脱却と融資審査体制の構築
- 債権管理・債権回収ノウハウの蓄積と基準の整備
- 適正な期待利回りの設定
- 投資者保護意識の醸成
2018年8月28日現在、業務再開には至っていません。
遅延中のファンドのその後
ファンド名
第254号ローンファンド Lucky Bank 90億円突破記念
対象のプロジェクト名
東京都江東区不動産担保ローン(以下「プロジェクト1」)
7月31日に担保不動産の売買が行われ債権の一部弁済金を受け取った。償還率約88.9%
朗報? ラッキーバンクから一部一部貸付債権回収のお知らせが来ました。
また、50億円もの債権を16億円でサービサーに譲渡
グリーンインフラレンディング(maneoマーケット)の場合
行政処分の指摘内容
- グリーンインフラレンディングから集めた出資金を親会社のJCサービスに貸し付けていたが、貸付金と会社の事業資金を分別管理しないで、ほぼ1つの口座で入出金している。
- 子会社のグリーンインフラレンディングはサイト上の説明と違う事業に親会社のJCサービスは支出している事例が多数認められた。
- 管理監督しなければならないmaneoマーケットは資金使途を確認しないままファンド募集を継続している。
- 確認をJCサービスに丸投げし、maneoマーケットは資金管理態勢を構築していない。
改善内容
- 経営体制の見直し
- 営業者の選定基準の策定
- 営業者の管理について
モニタリングの実効性を確保する取り組み
ファンドに対するモニタリングの強化 - 組織の見直し
人材確保による法令違反行為等の未然防止、早期発見
研修や人事評価の見直しによる法令遵守意識の向上 - 投資者対応
グリーンインフラレンディングの投資家向けの状況報告
匿名組合契約約款・金銭消費貸借契約書の改訂、スキームの見直し - 役員報酬の自主返納
今回の行政処分を受け、次の通り、関係役員の役員報酬を自主返納。
代表取締役 瀧本 憲治 報酬月額の50%、3ヵ月
取締役 安達 義夫 報酬月額の15%、2ヵ月
2018年8月28日現在、業務再開には至っていません。
遅延中のファンドのその後
進展なし。
これら4社を比較してわかった共通点とは?
さて、ここから本題に移ります。
行政処分を受けた事業者はその指摘事項にある共通点が見られます。
分別管理をしていない。投資家から集めた大切なお金と会社のお金を同じ口座で管理してしまっていると、ファンド募集時と違う事業に使われてしまう可能性が強くなってしまい、本来償還できたはずの投資元本が目減りしてしまう恐れあります。
貸出先が一つに集中している。貸し倒れ、デフォルト率は融資審査が厳しい銀行でさえ1~3%であると言われています。
投資家から集めた出資金を運用する投資会社等は、本来なら分散投資でリスクの低減を図るべきで、金融のプロが在籍しているはずですのでより厳しい目で貸し出し先、融資先を見るべきです。
しかし、分散投資をしないで、グループ会社や親族会社といった身内の会社に投資をしてしまっていると、なれ合いがでてしまいます。
不当に甘い審査、貸し倒れの危機が発生しても惰性で貸し出しし続けてしまう。
要するに、自らの保身に走ってしまうのです。
分別管理をしてない、貸出先が一つに集中している事業者の見分け方はあるのでしょうか?次回はこのことを掘り下げてみたいと思います。