直接的にはソーシャルレンディングの不正ではないのですが、1口1万円から投資できる不動産投資型クラウドファンディングやアプリでアパートの経営ができるサービスを提供する東証1部上場のTATERUの不正が取り沙汰されています。
メディアが一斉に報じています。
投資用アパート購入の為、TATERUが購入希望者の預金残高を改ざんし金融機関に提出
TATERUが「TATERU Apartment(タテルアパートメント)を運営しているその中で不正が起きていました。
報道では23万円しか残高がないのに投資用アパートを購入しようとした人が、TATERUに預金口座のコピーを提出、融資審査を通しやすくする為に業務提携している西京銀行に預金残高が622万円と改ざんされ、まんまと1億円の融資に成功したようです。
その後スルガ銀行の改ざん問題が自分にも関わっているのかと思った購入者は、弁護士を通じて調べた結果この問題が表に出たのだという。
購入希望者の甘い考え・・・。
2部屋空き室になっただけで採算割れを起こしてしまう物件を購入しようと決めた購入者の砂糖とはちみつを混ぜたような甘い皮算用があります。
資産に余裕があれば、満室になるまである一定期間の猶予期間があるわけで、その間に広告を打ったり、他の物件との差別化を図るために付加価値を高めたりと人を呼び込むための手法を取り入れることができますが、この方の場合は、そんなことはまるでお構いなし、新築だから人が勝手に群がってくるだろうと思っている辺り、あまりにもお粗末な考え方にゾッとしていまします。
新築は確かに住んでいて気持ちの良いものですが、人を満足させるためには思わぬ出費が必ず発生します。
TATERUの物件ははもともと高付加価値です。
なんでも、内装がおしゃれであるし、スマホ等のIoTとの相性が抜群、施錠、テレビ、エアコン、照明、防犯センサー、管理センターとのスマホとの連携がとれ、尚且アマゾンエコーが標準装備です。
これだけでも、空き室防止に繋がりますが、やはり賃料が若干高い傾向にあるといえます。
報道では、満室時の月間家賃収入が58万円で、月の返済額は約40万円、管理料などを抜いた手残りは12万円という想定ですので、10年間の利益は1440万円となります。
が、そんなことはまずありえません。
新築なので満室になる可能性はありますが、満室を維持するためにはそれ相応の努力、費用がかかります。
人を呼び込む為の広告費や入居者からのクレーム対応で応じた費用、騒音、臭気等の対応費が発生するかもしれませんし、劣化を防ぐための外壁の状態チェックや、また、エアコン、給湯器の修理、交換費、外壁修理、シロアリ駆除、雨漏り修理等、建物が老朽化すれば絶対やらなければならない修繕費用を積み立て置かねばなりません。
この方はまったくその考えがなかったのでしょうか?
さらに、空室率を考慮としたシュミレーションも甘いとしかいいようがありませんね
例えば、当初2年は0%、3年目以降10年目までは10%、11年目以降は5年ごとに5%ずつアップといった感じで想定して利益がどのくらい減るのか?
また、思わぬ災害に巻き込まれる可能性が無きにしもあらずがこの世の常です。
大規模地震や洪水で建物が被害にある可能性があるかもしれません。
少子高齢化で日本の人口が減っていくと分かっているはずなのに、フルローンでアパート経営に手を出そうとしていることが恐ろしいことです。
自分の資産と相談し、リスクに耐えられるレバレッジを考えなければならないと私は思います。
TATERUの急激な成長に隠された歪み
会社が急成長している裏で、時としてこういう不祥事は度々起きているものです。
融資については西京銀行東京ローンセンターから金利2.55%・35年で1億1300万円、別の金融機関から残りの融資を受ける計画で、「自己資金が実質ゼロ円で経営できる」という説明を受けた。
Aさんは手付金50万円を支払い、土地売買契約と工事請負契約を締結した。
との報道ですが、普通、銀行はフルローンには応じませんし、そんな危険を起こしてまで融資をしようとしません。
融資の審査を通りやすくするためにTATERU社員はこの改ざんを日常的に使った可能性が捨てきれません。
- 既存社員の新規社員育成にかかる時間が取れていたのか?
- 社員増加によるコンプライアンスの徹底が成されていたのか?
- 不動産業界に蔓延している買わせれば終わりみたいな行為が横行していた可能性。
様々な問題が業界に蔓延している可能性があります。
評価額約1000万円の土地を3倍の3200万円で売っていたとの報道
テレビ朝日がスクープ報道しています。
こういった不正行為をやらかす会社は一つ出てくると芋づる式で次から次へと出てくるのが当たり前ですが、案の定でてきましたね。
2億5000万円の不動産を購入した男性は、間違いなく今後弁護士を入れると思います。
これ一件だけではないはずですから、TATERU内ではこういう事が普通にまかり通っちゃってるんだと思います。
ソーシャルレンディングの影響は?
TATERUはタテルファンディング(TATERU Funding)という不動産投資型クラウドファンディング、いわゆるソーシャルレンディングもやっています。
今回の2つの事案を考慮してソーシャルレンディングのタテルファンディングにどのような悪影響がでてくるか考察してみたいと思います。
今回の不正に関わっているのはタテルアパートメント(TATERU Apartment)の事業内でのことです。
タテルアパートメント(TATERU Apartment)のスキーム
タテルアパートメント(TATERU Apartment)とタテルファンディングの表裏一体で幾重にも事業が重なっていてちょっと複雑化しています。
まずタテルアパートメントでアパート経営したいと希望しているオーナーさんが、
- タテルアパートメントに無料会員登録
- アパート経営の相談
- 土地のご紹介
- 土地の売主へ購入申し込みや金融機関へ融資の申込み
- 融資の本承認
- 契約
- 土地決済
- アパートの内装、外装等のデザイン決定
- 建築確認許可申請
- アパートの建築
- アパート経営スタート
の順番でのやり取りをおこなっていますが、今回問題になっているのが、4、5、7のところで不正が起きています。
タテルファンディングのスキーム
一方ソーシャルレンディングのタテルファンディングのスキームを見てみると、TATERUファンディングから集めた優先出資金と、TATERU自社から集められた劣後出資金とで構成されており、一般投資家と自社とでお金を出し合いアパートの運営をし、その利益を分配しましょうというインカム型と、竣工前のアパートに出資しTATERU会員に売却、その売却益を利益を分配するキャピタル型とで別れています。
優先出資金が優先的に元本の償還がなされ、残った利益がTATERUの分前になるスキームです。
また、解約金も発生せずに比較的簡単に解約できる不動産特定共同事業者1号です。
不正が起きたのは銀行からの融資と土地売却額の不正です。
タテルファンディングで募集をしているファンドはタテルアパートメントで言うところの「10のアパートの建築」から始めていると思われますので直接的にタテルファンディングの会員に即座に影響が出るとは考えられません。
が、とりあえず、最良と最悪とに分け、影響度を図ってみましょう。
タテルファンディングの影響が軽微な場合。
他のソーシャルレンディングと違い不動産特定共同事業でのスキームですので、法令で定められている通り(第26条)解約も応じる事ができるので、キャンセルする人は一定以上いるはずです。
が、ファンド一覧を見てみると、その殆どが運用期間が3ヶ月~6ヶ月で構成されていて、最近の募集はほぼキャピタル型です。
解約する人が出てきてもTATERUの自社資金を使い建築まで進めるはずです。
2017年1月~12月の当期純利益が48億円にも上っていることから、影響はほぼなしの可能性が大いに高いと思われます。
タテルファンディングの影響が最悪な場合。
ファンドの募集は法令に則って行なっています。
不動産特定共同事業の監督官庁は国土交通省や都道府県知事であり罰則規定も業務停止命令もあります。
(広告禁止)
第18条3不動産特定共同事業者は、その業務に関して広告をするときは、不動産取引による利益の見込みその他主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
(不当な勧誘等の禁止)
第20条
不動産特定共同事業者は、不動産特定共同事業契約の締結の勧誘をするに際し、その相手方に対し、当該不動産特定共同事業契約に関する事項であってその相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならない。
一連の不祥事に監督官庁が動く可能性も捨てきれません。
立入検査が入り、もしタテルファンディングにも不誠実な事案が見つかれば業務停止命令が下る可能性があります。
業務停止命令が下ると最悪業務の全部が停止する可能性がありますので、最悪、解約することもできなくなる可能性があることを肝に銘じなければなりません。
業務停止命令
第35条2
都道府県知事は、主務大臣又は他の都道府県知事の第3条第1項の許可を受けた不動産特定共同事業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、前項第1号から第5号までのいずれかに該当するときは、当該不動産特定共同事業者に対し、1年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
まとめ
急成長の裏側に潜む企業倫理が欠落した甘い考えが業界内に浸透していると思って良さそうです。
ポイント
預金残高を改ざんし金融機関に提出した社員はこの一件ではないはず、複数案件しているはず、もっと言うなら複数人いるはず。
売却額が市場価格より大幅に上乗せさせられ買わされた一件も、これだけではないはず。
もしかしたら、タテルファンディングにも不正の種が混じっているかもしれません。
自社で調査すると言っていますが、私は第三者委員会を設置して徹底的に調査した方がいいと思います。
自社、身内で調査するとなると必ず甘い考え、身内を守る考えが出てきてしまうものです。
出る膿は徹底的に出し切ってもらわなければソーシャルレンディング業界のみならず、日本の不動産業界や投資の世界の不信感が広がってしまいかねない緊急事態なのですから・・・。
しかし、我々投資家は自分のお金を守るため最善の行いを粛々と進めるしかありませんね。
o(*≧д≦)o))
事が収まるまで解約して静観していたほうが良さそうだにゃ
(o ̄∀ ̄)ノ”